市民の力で、社会は変わる。
コミュニティ・オーガナイジング(Community Organizing、以下CO)は、市民の力で自分たちの社会を変えていくための方法であり考え方です。
オーガナイジングとは、人々と関係を作り、物語を語り立ち向かう勇気をえて、人々の資源をパワーに変える戦略をもってアクションを起こし、広がりのある組織を作りあげていくことで社会に変化を起こすことです。キング牧師による公民権運動、ガンジーによる独立運動、どれも数えきれないほど多くの人々が参加し、結束することで社会を変えてきました。
そして、普通の市民が立ち上がり、それぞれが持っている力を結集して、コミュニティの力で社会の仕組みを変えていくのが、COです。市民主導で政府、企業などさまざまな関係者を巻き込みながら、自分たちのコミュニティを根本からよくすることを目指します。
COは、「先行き不透明な状況の中、人々が目的を達成できるよう責任を引き受けるリーダーシップ」と言うこともできます。リーダーシップと言うと、カリスマ性のある限られた人にだけ与えられた特別なものと思われがちです。しかし、オーガナイジングでは、人は誰でもリーダーであると考えます。子どもの頃に何度も転びながら自転車の乗り方を覚えたように、行動を起こし、何度も失敗しながら学んでいくのです。
5つのリーダーシップ
コミュニティ・オーガナイジングの5つの要素
COは、次の5つのリーダーシップの要素から構成されています。
1.ストーリーテリング(パブリック・ナラティブ)
人が行動を起こす時、そこには必ずストーリーが生まれます。また、人が動くためには、まず心が動かされるものです。
なぜ自分が行動を起こしたか、自身のストーリーを語って聞き手の共感を呼ぶこと(=Story of Self)。聞き手と自分自身が共有する価値観や経験といった“私たち”のストーリーを語り、コミュニティとしての一体感を創り出すこと(=Story of Us)。いま行動を起こすことについてのストーリーを語ることで、共に行動する仲間を増やすこと(=Story of Now)。これらが有機的に組み合わされた、人の心を動かす物語を、パブリック・ナラティブ(公で語る物語)と呼んでいます。
2.関係構築
自主的なボランティア活動を継続的に行なうためには、メンバー同士の強い関係を構築することが鍵となります。金銭関係や雇用関係がないボランティア活動では、共通の目的を持ち、互いに、関心を持ち合い、成長し学び合える関係であることが必要です。さまざまな関係構築の方法がありますが、COでは特に一対一で話すことによって関係を構築していくことが重要となります。
3.チーム構築
活動を推進していくためには、コアとなる数人から10人程度のチームが重要です。多様性のある性格、スキル、ネットワークを持つ人を集め、共通の目的のもとに、相互補完しながらリーダーシップをチームで発揮することのできる組織を構築します。
4.戦略立案
課題を解決したり、社会のシステムを変えるためには、ステークホルダー(利害関係者)を分析し、自分たちの置かれている状況と、自分たちの持っているリソース(時間やお金、スキル、ネットワークなど)をどう使って状況を変えていけるか、創造的な戦略を立てることが不可欠です。
5.アクション
社会課題の解決は少人数ではできません。アクションを共に起こすコミットメントを作っていくこと、楽しく、かつ実際に社会が変えられる、やる気が出るアクションを設計することが欠かせません。
ワークショップ/トレーニングでは、参加者たちがこの5つのリーダーシップの要素を自分自身のコミュニティで教えられるようになり、さらに活動を広げることを目指します。
ワークショップは、1)理論についての講義、2)少人数でのグループワークと実践、3)振り返り、で構成されます。理論を理解した上で、実践し、振り返る、という学習方法で効果的にリーダーシップスキルを身につけていきます。さらに詳しく知りたい方は、こちらのフォームからお問い合わせください。
マーシャル・ガンツ博士(Dr. Marshall Ganz)
ハーバード大学ケネディスクール(公共政策大学院)の上級講師(公共政策)およびリベラルアーツ学部講師(社会学)。草の根組織モデルの創始者・提唱者。
1960年にハーバード大学入学後、1964年に中退しミシシッピ州の公民権運動にボランティアとして参加する。1965年にシーザー・チャベス氏とユナイテッド・ファームワーカーに加わり16年に渡り労働者組合、コミュニティ問題、選挙オーガナイジングに関わりオーガナイジング・ディレクターになる。1980年代は草の根団体と協同し効果的なオーガナイジング・プログラム、有権者動員プログラムの開発に関わる。1991年に今までの経験を学問的に深めるために、28年ぶりにハーバード大学に戻り卒業、1993年に同大ケネディスクールにて行政学修士を修了、2000年に社会学博士号を修了する。
2008年の米国大統領選挙でバラク・オバマの選挙参謀として初の黒人大統領を誕生させたことでも有名。ソーシャルムーブメント、市民組織、政治におけるリーダーシップ、組織、戦略について研究、講義、執筆をおこなっている。ケネディスクールで「Organizing: People, Power, Change」と「Public Narrative: Self, Us, Now」を教えるほか、NPO向けに様々なワークショップを開催している。